地域の魅力発見! 品川の文化芸術団体紹介  

 品川区内では幅広いジャンルの文化芸術団体が、区民や全国各地、さらには世界に向けてさまざまな活動に取り組んでいます。
 今回は伝統芸能の一つである「能」の公演や普及・啓蒙活動に幅広く取り組んでいる「喜多能楽堂」と、良質なクラシック音楽を一人でも多くの方に届けたいと活動している「品川フィルハーモニー・アンサンブル」をご紹介します。
                                              令和5(2023)年5月11日号特集記事

品川フィルハーモニー・アンサンブル

■品川フィルハーモニー・アンサンブルの概要------------------------------------------------------------------------

2010年創立。「地域の人々に愛されるオーケストラ」を目指し、子供から大人まで
クラシック音楽をもっと身近に感じて楽しんでもらうため、バロック音楽から現代
曲まで幅広いレパートリーを演奏。年1回の定期公演をはじめ、品川区スクエア荏原
ひらつかホールを主な拠点として多彩な活動を続けています。
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お話しいただいた方
代表        荒谷 歩美さん
指揮者       河村 逸平さん
コンサートマスター 矢野 翔 さん

目指したのは一騎当千の「コレギウム・ムジクム」

── 創立の経緯を教えてください。
荒谷さん ──
私が品川区在住というご縁もあり、品川にプロフェッショナルのオーケストラを作ろうと思い立ちました。2009年のことです。それからコアメンバーとなる有志の方々と1年以上かけて相談を重ね、2010年12月に創立しました。品川を拠点として活動するオーケストラであることを示すため、「品川フィルハーモニー・アンサンブル」と命名しました。創立当時は最低でも1、2年は続けようと考えていましたが、そのためにもまず12年続けるという目標を立てました。おかげさまで今年はその目標を超えて13年目に入っています。

── メンバーはどうやって集められたのですか?
荒谷さん ──
私はイタリアやパリで音楽教育に携わっていたのですが、その頃にマスタークラスで出会った方や、日本に戻ってきてからのイタリア文化会館の公演などで出会った方など、それまでにお付き合いのあった方に1人ずつお声がけさせていただきました。皆さん、講師や教員、そしてプロフェッショナルで活動している方々ばかりです。実は、創立時に目指したのはバロック時代の「コレギウム・ムジクム」という演奏グループなんです。このグループは職業音楽家や音楽学生、教員等などで構成され、一人ひとりがソリストとして活躍できる力を持つ自立した音楽家たちが集まった魅力的な団体でした。

── メンバーは何人ですか?
荒谷さん ──
14人です。ヴァイオリンが6人、ビオラが2人、チェロが2人、コントラバスが1人、そして指揮者、ピアノ、フルートという編成です。13年の間に入れ替えはありましたが、人数は変わっていません。創立のコンセプト通り、メンバー一人ひとりがソリストになれる実力を持っているので、昨年からは定期演奏会で、メンバーからソリストを出すことにも挑戦しました。

── 一騎当千のメンバーが集まったオーケストラというわけですね。

荒谷 歩美さん(代表/フルート)

1人でも多くの方にクラシック音楽を好きになっていただきたい

── 地域への芸術鑑賞の機会提供なども含め、どのような公演活動をされているのか教えてください?
河村さん ──
私たちはスクエア荏原を拠点として地域に密着した演奏活動をしたいと考えていますが、区内にはクラシックに慣れ親しんでいない方々も多くいらっしゃると思います。そこで私が指揮者として参加してからは、クラシック音楽への距離感を縮めていただけるよう、演奏する曲や作曲家についてステージで解説しています。

曲の解説をする河村さん

── どんな解説をされているんですか?
河村さん ──
例えば、作曲家が曲に込めた思いや、彼らがどんな風に暮らしていたかなどの背景です。当たり前のことですがモーツァルトやベートーベンも人間であり、朝起きてご飯食べてという生活をしていました。そうした人間としての1面や、私はウィーンに住んでいたことがあるので彼らが訪れていた場所などについて紹介することで、彼らが作った音楽を少しでも身近に感じていただければと思っています。良い意味でクラシック音楽への“敷居”を下げ、私たちのコンサートをきっかけに他のクラシック音楽にも興味を持ってもらえたら嬉しいですね。私自身は、クラシック音楽が好きでこの世界で生きています。その素晴らしい音楽を、区民の皆様をはじめ、できるだけ多くの人に紹介したいと思って活動しています。

荒谷さん ──
河村さんの解説はとても人気で、お話が面白いと来てくださる方も多いんです。

河村 逸平さん(指揮者/ギター)

── クラシック音楽を身近にするという点で、他に留意されていることはありますか?
矢野さん ──
クラシック音楽へのハードルを下げるため、コンサートでは多くの方が聞いたことのあるような曲を中心に取り上げるよう留意しています。例えばチャイコフスキーの弦楽セレナーデのような、テレビCMや映画音楽で使われていてどこかで聞いたことのあるような曲などを演奏することで、クラシック音楽に馴染みのない方にも来ていただければと思っています。

矢野 翔さん(コンサートマスター/ヴァイオリン)

河村さん ──
選曲については、耳馴染みのある曲も演奏すると共に、幅広くいろんな音楽を聴いていただきたいとも思っています。例えば、現代曲を聴く機会はあまりないと思いますが、時にはちゃんと解説をした上で聴いていただく機会も設けたい。小編成用の楽譜のない曲については、品川フィルハーモニー・アンサンブルのメンバーで演奏できるよう私が編曲し、できるだけいろいろな音楽を演奏する。そうしてできるだけ幅広い音楽に触れていただく中で、やっぱりモーツァルトはいいなとか、聞いたことなかったけど現代曲は好きだなとか、自分の好きな音楽を見つけるきっかけにしていただければと思います。

品川から日本全国へ、世界へ。そしてまた品川で。

荒谷さん ──
品川フィルハーモニー・アンサンブルとしては、まずは地域での活動を重視し、昨年は小中学校の校長先生方や音楽の関係者の方々を公演に招待させていただきました。今後もお子様や生徒さん、学生さん、地域の方々にさらに音楽をお届けできるよう取り組み、より区民の皆様に愛されるオーケストラに育てていきたいと考えています。また、この品川から、全国や世界に発信できる活動にも取り組みたいと考えています。

河村さん ── 私自身にも就学前の子供がいますので、そうしたお子さんも楽しめるようなコンサートも開いていきたいですね。長い曲や難しい曲だと、どうしてもお子さんが退屈してしまいますので、少しでも演奏を聴いてもらえるように選曲も配慮してお子様向けに公演できればと考えています。また、品川フィルハーモニー・アンサンブルのメンバーは、カルテットなどさらに小さな編成でも活動しています。例えば、去年は北海道で演奏したり、厳島神社の高舞台で奉納公演をしたりしました。そうした全国での活動の際にも、品川文化振興事業団さんに後援していただくなど、品川区の代表として活動しています。

厳島神社高舞台での奉納公演の様子

── 今後の抱負や目標についてお聞かせください。
河村さん ──
やはりオーケストラの地元である品川を大切にして、地域の皆さんに密着した形で演奏活動を行っていきたいと考えています。と同時に、さまざまな地域にも足を運んでクラシック音楽を広める活動もする。そうした外での活動で研鑽を重ね、自分たちの実力も向上させ、それをまた地元である品川で還元するなど、活動の幅も広げていきたいと思っています。

矢野さん ──
私自身、品川を離れて演奏する機会も多いのですが、地域の方々との関わりあいをもっと深めていきたいと思っています。クラシック音楽が好きな人だけでなく、お子様や介護が必要な人たちにも届けたいと考え、学校や介護施設、商店街などでの演奏も計画しています。一方で、品川フィルハーモニー・アンサンブルの名前を日本全国や世界にも知っていただけるような活動にも取り組み、私たちの地域の文化を広げていきたいとも考えています。

荒谷さん ──
地域の方々とコラボレーションして、面白い企画をいろいろ実現していきたいですね。また、現在、フランスの国立音楽院の教授から声をかけていただき、評価された企画があります。来年以降、それをどのように実現していくかを考えているところです。本拠地であるスクエア荏原ひらつかホールを中心とする品川区での活動を重ねて、未来へつなげていきたいと思っています。区民の皆様もぜひ一度、機会を見つけて聴きに来てください。

■品川区民読者対象 コンサートご招待企画------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
~誕生日を名曲と共に~
対象日:2023年6月10日(土) 開演:14時 会場:スクエア荏原ひらつかホール
対象者:品川区在住小学生以上で当日(6/10)が誕生日の方(先着10組20人)

公演当日に、インフォキュリア5/11号と住所・誕生日のわかるもの(運転免許証など)をご持参いただき、会場受付でご提示ください。
ご同伴者1名も無料でご入場いただけます。(小学生は保護者同伴)
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今後のコンサート予定(会場:スクエア荏原ひらつかホール)

6月10日 (土) アストル・ピアソラの青春  ※区民読者ご招待企画対象公演
7月12日 (水) チェロとオーケストラのコンサート
9月 7日 (木) ギターとオーケストラのコンサート
10月7日 (土) スクエア荏原10周年記念事業クラシックコンサート 「オペラで乾杯」
12月22日(金) 第13回定期公演会