企画展

企画展

1995年2月10日(金) 〜 1995年3月8日(水)

伊藤久三郎 —透明なる叙情と幻想

全室

  • 終了

1995年2月10日(金)~3月8日(水)
10時~18時30分 木曜休館

一般500(400)円
高・大生300(200)円
小・中生100円(50)円 ※( )内は20名以上の団体料金

シュルレアリスムをベースにしながら、清冽なまでの香気と叙情をたたえた絵画で知られる伊藤久三郎(いとう きゅうざぶろう、1906~77)の東京における本格的な回顧展。
油彩画80数点、デッサン10余点によって、その全貌を明らかにすることで、正当な評価を促し、鑑賞者にこの新鮮な未知の作家を紹介しようとするものです。

概要

戦前に影響を受けたシュルレアリスムをベースにしながらも、自由に自らのイマジネーションをはばたかせ、一貫して清冽なまでの香気と叙情をたたえた絵画で知られる、伊藤久三郎の東京における初の本格的な回顧展を行います。

伊藤は1906(明治39)年に京都で生まれ、京都市立絵画専門学校(日本画)を卒業後、上京し馬込に住みながら1930年協会研究所に通い、当時の洋画壇で最も先鋭なグループの雰囲気の中で、フォービスム的な絵画を描きはじめます。

間もなく二科展に入選し、以後、同展でのめざましい活躍はいちはやく注目されました。その清澄な詩的作品は、当時のシュルレアリスムの影響を受けながら、すでに独自のものを持っており、今日でも新鮮さを失っていません。

その後、二科会内の前衛的傾向の作家グループである九室会の創立会員となり、また新油絵展、新美術家協会展などに参加するなど、伊藤は当時の先端的な作家のひとりでした。

戦時中、京都に帰郷していた 伊藤は、戦後、行動美術協会に第1回展から参加。同会展を中心に発表をつづけます。
画面は次第に抽象的な傾向を示し、1957年にサンパウロ・ビエンナーレに招待出品されるなど活躍をしていました。

しかしながら、1958年の胸部疾患による療養以後、成安女子短大教授となりながらも、ほとんど積極的な作品発表を行わず、むしろ自らの世界の中で、より自由にして多様な孤高の制作を続けたのでした。
その後、伊藤は1976年には京都府美術工芸功労者の選定を受け、1977年に71歳で逝去しました。

翌年、京都市美術館で遺作展が開催され、その後画集が刊行されるなど、主に京都ではその足跡が評価されています。しかしながら生前の今日にいたるまで、東京では一度も本格的な回顧展が開催されずにきており、また晩年の画壇との没交渉の姿勢のために、伊藤久三郎という大きな存在の評価は、日本の美術史上の欠落点となっていました。

このような、単に京都における抽象画の先駆者としての評価にとどまらない、見事な絵画世界は今日においてもその純粋さを保っています。

現実の羽根、石、ボタンといった平凡で具体的な素材をもとにしながらも、様々なイメージをつむぎ出し、伊藤独自の幻想的な夢の世界をかたちづくります。そのユーモアや機知に富む、明るい色彩と明快なイメージによるその絵画は、不安の世界よりはむしろ柔和な叙情的なものを示しています。日本的な装飾感にも通じる卓抜な感覚は、多様さを見せながらも、一貫して詩的な澄明さでわれわれに訴えかけてきます。

本展はこのような発見さるべき最後の作家とも言いうる伊藤の東京での初めての本格的な回顧展となるもので、油彩画80数点、デッサン10余点によって、その全貌を明らかにすることで、正当な評価を促し、また鑑賞者にこの新鮮な未知の作家を紹介しようとするものです。

関連企画

■シンポジウム
日時 1995年2月25日(土)14時~16時
会場 O美術館 館内
講師 乾由明(美術批評)

■ギャラリートーク 
日時 1995年2月11日・19日・26日・3月4日 14時~15時
会場 O美術館会場内
天野一夫(O美術館学芸員)

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